五年前の世界

だからお前は間違っている。いつしか誰も言わなくなった言葉を思い出す。

最近思う事は私は仕事選びを間違えたのかもしれないということ。仕事は能力でやるものだと思っていたけれど、性格でやるものなのかもしれない。私は美しくて完璧なものを作りたかった。けれど、世の中にそんなもの少ししかない、そのことの意味に漸く気づいた。私の中に手掛かりはあるが、答えはない。大人は嘘をついて騙すから何も信用してはいけない。すべてを疑って真実を見つめなければいけない。プライドを捨ててしまえば楽になるかもしれないけど、誰にも必要とされない。誰かに必要として欲しかったから、私は誰よりも都合のいい人間に成り下がった。誰も私に手を差し伸べなかったのは、自分の身を自分で守るのが大人だから。社会は敵なので何度でも私を殺そうとする。私は手元にあったナイフを捨ててしまった。抗うことも自死もできない。

波に飲まれて深く沈んだ海の底で光を見たので、もうしばらくは生きることにした。辛いのはお前がちゃんと生きてこなかった罰だ。今更死んで楽になろうなんて虫のいい話なので、背負う苦しみを覚えて死ね。前に進むためには甚大な努力と覚悟と運がいる。努力には限界がある。それでもいいと思える茨道があることを今はただ幸福に思う。
誰かを利用することに慣れてしまうのが大人なのだろうか。諦めることに慣れてしまうのが大人なのだろうか。大人は音楽を聴いて泣くだろうか。歳を重ねる感覚は次第に薄れる。いつまで経っても大人になれないでいる。